INPITが運営する外国出願補助金の令和8年度最終回(第4回)が、2026年9月7日から受付を開始する。外国で特許・意匠・商標を出願する際の費用の最大2分の1(年間上限300万円)を補助するこの制度は、海外展開を検討する中小メーカーやスタートアップにとって見逃せない機会だ。
INPIT外国出願補助金とは何か
INPIT(独立行政法人工業所有権情報・研修館)が実施するこの補助金は、中小企業・スタートアップ・大学等を対象に、外国で特許(発明)・実用新案・意匠・商標を権利化する際にかかる費用の一部を国が肩代わりする制度だ。補助率は対象経費の2分の1以内で、年間上限は300万円。対象費用には、現地代理人費用・翻訳費用・外国特許庁への出願料が含まれる。
令和8年度からの新機能として、出願手続補助に加えて中間手続補助(審査請求・拒絶理由通知への応答にかかる費用)も対象に加わった。これにより、出願してから権利化するまでの一連のコストを、より一貫して補助制度でカバーできるようになっている。
令和8年度の公募は年4回に分かれており、第4回(9月7日〜9月28日)が最終回となる。中間手続補助の交付申請は12月14日まで受け付けているが、出願手続補助の応募機会はこの第4回が今年度の最後だ。申請タイミングを逃すと、次の機会は令和9年度まで待つことになる。
なぜ今「海外特許」が中小企業に必要なのか
「国内で特許を取っているから安心」——そう思っている中小メーカーの経営者は少なくない。しかし、特許権は属地主義の原則に基づき、取得した国の領域内でしか効力を持たない。つまり、日本特許を持っていても、海外の競合が同じ技術を使った製品を製造・輸出しても、法的に止める手段がない。
国際市場での競争が激化する今、製品を海外に売るだけでなく、現地で特許・商標を押さえておくことが「攻めの知財戦略」の基本となっている。特に東南アジア・米国・欧州などでは、現地競合や中国資本の企業が先に商標を登録してしまう「冒認出願」のリスクも高い。
一方、外国出願のコストは決して小さくない。1カ国あたりの特許出願から権利化までに100万円を超えるケースも珍しくなく、複数国展開ともなれば費用は一気に膨らむ。この資金的ハードルを下げるのが、INPIT外国出願補助金の本質的な役割だ。
第4回公募に向けた実務チェックリスト
補助金申請で最も多い失敗は「締切直前の準備」だ。INPIT外国出願補助金はjGrants(電子申請システム)を通じて申請する。jGrantsへのログインにはGビズIDプライムアカウントが必要だが、このアカウント取得には通常1〜2週間かかる。9月7日の公募開始に間に合わせるには、遅くとも8月下旬にはGビズID取得を完了させておく必要がある。
また、補助対象となるのは「すでに日本国特許庁に出願済みの発明等」をもとにした外国出願が原則だ。国内出願をまだ行っていない技術や商標については、まず国内出願の手配を進めてから外国出願を検討する流れとなる。なお、JETRO等の他の補助金制度と同一の出願を重複して申請することはできないため、複数制度を比較した上でどちらを利用するかを先に確定させておくことが重要だ。
採択後に実績報告書の提出義務があることも見落としがちな点だ。正当な理由なく権利化しなかった場合、次回公募での採択資格を失うリスクがある。補助金を受けたら、出願後の審査対応までを計画に組み込んでおく必要がある。
- GビズIDプライムアカウントを今すぐ取得(1〜2週間かかる)
- 補助対象の外国出願に対応する国内出願がすでに完了しているか確認
- JETRO等の他補助金との重複申請になっていないか整理
- 申請する出願国・技術を絞り込み、現地代理人の見積もりを入手
- 採択後の実績報告・権利化状況報告のスケジュールを社内で共有
「補助金の前」に考えるべき海外知財戦略の優先順位
補助金を使う前に、より根本的な問いに向き合う必要がある。「どの国で、何を守るのか」だ。予算が限られる中小企業が闇雲に多国展開しても、維持費が経営を圧迫するだけになりかねない。自社製品の主要輸出先・製造委託先・競合の本拠地を軸に、優先国を絞り込むことが先決だ。
特許・実用新案・意匠・商標では、それぞれの戦略的意味が異なる。たとえば製造方法の特許は現地工場を持つ競合への牽制に有効だが、ブランド保護が目的なら商標が優先される。技術的な差別化要素を持つ製品の場合は意匠と特許の組み合わせが有効なケースも多い。こうした「何を出願するか」の判断は、INPIT知財総合支援窓口(全国各都道府県に設置)で無料相談を受けることができる。
補助金申請の実務準備と並行して、こうした戦略整理を弁理士やINPIT窓口と進めることが、費用対効果の高い海外知財展開への近道となる。第4回の受付は9月28日で終了するが、今すぐ動けば十分に間に合う。
よくある質問
Q. 国内出願がまだない技術でも申請できますか?
A. 出願手続補助の原則は「すでに日本国特許庁に出願済みの発明等」をもとにした外国出願です。国内出願が未完了の場合は、まず国内出願を優先し、その後に外国出願を計画することをお勧めします。詳細はINPIT公式サイトの公募要領をご確認ください。
Q. 補助率や上限額はどのくらいですか?
A. 補助率は対象経費の2分の1以内、年間の上限額は300万円です。現地代理人費用・翻訳費用・外国特許庁への出願料が対象に含まれます。
Q. 商標の海外出願にも使えますか?
A. はい。特許(発明)・実用新案・意匠・商標の4種類が補助対象です。ブランド保護目的での商標の外国出願にも利用できます。
Q. 採択されたのに権利化できなかった場合、どうなりますか?
A. 正当な理由なく権利化しなかった場合(審査請求期間徒過・登録料未納等)は、以降の公募で採択候補として認められないリスクがあります。出願後の審査対応までを含めたスケジュールを事前に計画しておくことが重要です。
Q. INPIT知財総合支援窓口の相談は有料ですか?
A. 全国各都道府県に設置されているINPIT知財総合支援窓口への相談は無料です。補助金申請の準備段階から、どの国・どの権利種別を出願すべきかの戦略相談まで対応しています。
出典:INPIT外国出願補助金 令和8年度第4回公募(9月7日〜28日)——中小企業・スタートアップの海外特許出願費用を最大1/2補助
