知財を「稼ぐ力」に変える実践塾の使い方

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「特許は取ったが活かし方がわからない」——そんな悩みに応える実践型プログラムが動き出した。日本弁理士会が2026年9月より開講した「知財活用塾(入門編)」は、制度の基礎知識がある人を対象に、知財を収益に結びつける思考法を全3回で伝える構成。中小メーカーや知財担当者が今すぐ動ける内容を、本稿では徹底的に掘り下げる。

何が始まったのか——「知財活用塾」の概要

日本弁理士会は2026年8月14日、中小企業やスタートアップ経営者などを対象とした「使える!わかる!動ける!知財活用塾(入門編)」の参加者募集を開始した。第1クールは9月16日・9月30日・10月14日の全3回、東京・霞が関の弁理士会館にて対面で実施され、第2クールはオンライン形式で10月6日・10月22日・11月13日に開催される。

注目すべきは「誰が対象か」という点だ。このプログラムは「特許・商標などの制度についてある程度ご存知の方」を前提としており、ゼロから制度を教える入門講座ではない。その一歩先——すなわち、日々の業務の中で何に注目し、何を考えれば事業に知財を活かして収益に貢献できるのか——を問いかける実践型の設計になっている。参加費は各回1,000円(税込み)で、INPIT知財総合支援窓口が案内するチラシ記載のクーポンコードを使えば無料で参加できる。

プログラムは3講構成で、第1講が「事業活動と知的財産権」、第2講・第3講ではワークショップや事例演習を通じて知財活用の実践を深める内容と案内されている。定員は対面回が各回18人、オンライン回が各回24人(いずれも先着順)と少人数制を維持しており、グループワーク形式のため、参加にはPC・タブレット等の端末とインターネット接続が必要となる。

このニュースが中小メーカーに突きつける問い

多くの中小メーカーは「特許を取ること」を知財活動のゴールにしてしまいがちだ。出願費用と維持年金を払い続けながら、その権利が事業でどう機能しているかを問い直す機会は少ない。今回の知財活用塾が「制度の基礎知識がある人」を対象とした実践型プログラムとして設計されていることは、まさにその盲点を突いている。

知財を「守り」から「攻め」へと転換した企業は何をしているのか。たとえば令和8年度の知財功労賞で経済産業大臣表彰を受けた企業の中には、「研究開発・事業・知財の各部門が三位一体で連携し、研究開発の初期段階から市場・事業を起点とした知財活動を組み込む」という経営モデルへの転換を評価されたケースがある。このアプローチは大企業だけのものではない。むしろ、意思決定が速く社内連携がしやすい中小企業こそ、この「三位一体」の考え方を取り込みやすい。

知財活用塾のプログラムが問いかけるのも同じ方向性だ。「日々の業務の中で何に注目して何を考えて仕事をすれば事業に知財を活かして収益に貢献できるのか」——この一文は、経営者と知財担当者が日常の商談・開発・調達の場面で、知財の視点を持ち込む習慣を作ることへの招待状でもある。

知財活用塾を最大限に活かす「参加前3ステップ」
1
Step 1|権利の棚卸し
J-PlatPatや社内台帳で保有特許・商標・意匠を一覧化し、各権利と現行製品・サービスの対応関係を確認する。
2
Step 2|休眠権利の再評価
放棄・失効した権利を洗い出し、現在の事業・新規事業での活用可能性や第三者へのライセンス余地を検討する。
3
Step 3|競合の権利状況を俯瞰
J-PlatPatの特許分類(FI・Fターム)で競合他社の特許ポートフォリオを概観し、自社の強み・空白領域を把握しておく。

参加前に確認したい3つの「自社チェック」

知財活用塾への参加を最大限活かすには、事前に自社の現状を棚卸しておくことが重要だ。以下の3点を社内で確認してから臨むと、ワーク演習の場でより具体的な議論ができる。

第一に「保有権利の一覧と事業との対応関係」だ。自社が持つ特許・実用新案・商標・意匠の一覧を引き出し、それぞれが現行のどの製品・サービス・販路と結びついているかを確認する。特許庁のJ-PlatPatや自社の知財管理台帳を使えば、出願番号・登録番号と技術的テーマを紐付けるリストが作れる。これが「棚卸し」の起点になる。

第二に「失効・放棄した権利の確認」だ。維持費用を節約するために放棄した特許が、実は今の事業で使えた可能性はないか。あるいは他社にライセンスできた可能性はないか。INPIT知財総合支援窓口では、こうした休眠・開放特許の可能性を専門家と無料で相談できる。

第三に「競合他社の権利状況の把握」だ。自社製品に関連する技術分野で、競合や川上メーカーがどのような特許を持っているかを把握しているか。J-PlatPatの特許分類(FIコード・Fタームなど)を使った基礎的な調査は、知財担当者が社内で実施できる。この「ランドスケープ把握」を持参すると、塾でのワークが格段に深まる。

  • 保有権利と事業との対応表を作る(J-PlatPat活用)
  • 放棄・失効した権利を洗い出し、再評価の余地を検討する
  • 競合他社の特許ポートフォリオを技術分類で俯瞰しておく

参加できない人のための「代替アクション」

定員が各回18〜24人と少人数のため、すでに第1クールへの参加が難しい状況の読者も多いだろう。そのような場合のために、同等の実践機会につながる公的リソースを整理しておく。

まず、INPIT知財総合支援窓口(全国47都道府県に設置)では、弁理士や知財の専門家が無料で個別相談に応じている。「事業に知財をどう活かすか」という実務的な相談も受け付けており、活用塾に参加できない場合の代替窓口として最適だ。次に、INPITのeラーニングプラットフォーム「IP ePlat」では、知財経営・特許情報活用などのコンテンツを無料で受講できる。さらに、特許庁の専門家である産業財産権専門官が中小企業を訪問し、社内研修の講師を無料で務める「産業財産権専門官の訪問支援」制度も活用できる。旅費・謝金は不要で、従業員向けの知財マインド醸成に役立てられる。

これらを組み合わせれば、知財活用塾の代わりに、あるいは補完として、自社の状況に合った学習と相談の機会を設計できる。重要なのは「機会があれば動く」という受け身のスタンスを変え、具体的な問いを持って専門家に当たることだ。知財は「持っているだけ」では経営資源にならない。問い続けることで初めて、競争優位の源泉になる。

  • INPIT知財総合支援窓口(全国):無料個別相談
  • IP ePlat(INPIT):知財経営・特許情報のeラーニング(無料)
  • 特許庁 産業財産権専門官の訪問支援:社内研修講師を無料派遣
  • 日本弁理士会 無料知的財産相談室:警告対応・模倣品対応も相談可

よくある質問

Q. 知財活用塾(入門編)は「知財ゼロ」の経営者でも参加できますか?

A. 日本弁理士会の案内によると、本プログラムは「特許・商標などの制度についてある程度ご存知の方」を対象としています。完全な初学者向けではないため、まずはINPIT知財総合支援窓口の無料相談や特許庁の制度入門セミナーで基礎知識を押さえてから参加すると効果的です。

Q. 第1クール(対面)に参加できなかった場合、第2クール(オンライン)に参加できますか?

A. はい。第2クールは2026年10月6日・10月22日・11月13日のオンライン開催で、定員は各回24人(先着順)です。INPIT知財総合支援窓口(chizai-portal.inpit.go.jp)や日本弁理士会HPで最新の募集状況を確認してください。

Q. 参加費はいくらですか?無料になる方法はありますか?

A. 参加費は各回1,000円(税込み)です。ただし、INPIT知財総合支援窓口等が配布するチラシに記載されているクーポンコードを使って申し込むと、無料で参加できます。最新のクーポン情報はINPITのお知らせページでご確認ください。

Q. 知財担当者が1人もいない中小企業でも、知財を「攻めの経営資源」として使えますか?

A. はい。特許庁の産業財産権専門官が無料で訪問して社内研修を行う制度や、INPIT知財総合支援窓口の無料個別相談を活用することで、専任担当者がいなくても外部リソースを「擬似的な知財部門」として機能させることができます。まずは窓口への相談から始めることをお勧めします。

出典:「使える!わかる!動ける!知財活用塾(入門編)」参加者募集——日本弁理士会、中小企業・スタートアップ向けに9月16日から全3回開催(第2クールはオンライン・10月〜)