無料で経営戦略に知財分析を——INPIT第2回IPランドスケープ公募が始まった

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INPIT(工業所有権情報・研修館)は2026年7月27日、令和8-9年度「IPランドスケープ支援事業」の第2回公募を開始した。市場・事業・知財の三つの情報を統合して経営課題を分析する専門家支援を、利用者負担ゼロで受けられる公募制事業だ。2026年度・2027年度の2年間で計8回の公募が予定されており、中小メーカーや知財担当者にとって見逃せない機会となっている。

今回の公募で何が起きているのか

INPITが運営する「IPランドスケープ支援事業」は、企業が抱える経営・事業上の課題に対し、市場・競合・技術開発動向といった情報に知的財産(特許等)の情報を重ね合わせて分析し、強みを活かした解決策を提案する無料の専門家支援事業だ。

2026年7月27日の更新情報によると、令和8-9年度の第2回公募がスタートし、公募説明会が7月29日(水)・8月4日(火)にオンラインで開催された。アーカイブ動画も公開されており、今から内容を確認することができる。令和8-9年度公募においては、この説明会への参加またはアーカイブ動画の視聴が応募要件となっている点に注意が必要だ。

事業の費用負担は一切ない。専門家への報酬はINPITが全額支援する仕組みであり、2026年度・2027年度の2年間で計8回の公募が予定されている。第2回以降の具体的な公募期間は確定次第、特設サイト「IPL支援ポータル」(ipl2026-2027.inpit.go.jp)で更新される。

IPランドスケープ支援事業への応募から活用までの流れ
1
STEP 1:説明会動画を視聴
IPL支援ポータルで公開中のアーカイブ動画を視聴(令和8-9年度は応募要件)
2
STEP 2:経営課題を言語化
「どの市場に参入すべきか」「競合との技術差別化は?」など、知財分析で答えたい問いを文章化
3
STEP 3:応募書類を作成・提出
公募期間内に申請書を提出。知財総合支援窓口での書類作成支援も活用可能
4
STEP 4:採択審査
INPITが書類を審査。不採択の場合は次回公募に再挑戦できる
5
STEP 5:専門家による分析・提案
市場・競合・特許情報を統合したIPランドスケープ分析を実施。経営課題への解決策を提案(費用負担ゼロ)
6
STEP 6:経営戦略へ反映
分析結果を新規事業参入判断・特許出願方針・ライセンス戦略などの意思決定に活用

「IPランドスケープ」とは何か——中小メーカーが知るべき基本

IPランドスケープとは、自社・競合他社・市場全体の特許情報を地図(ランドスケープ)のように俯瞰し、経営の意思決定に活かす分析手法だ。従来の「パテントマップ作成」が目的化しがちだった段階とは異なり、「経営層との共有」「事業の方向性への反映」という実装・定着の段階が2026年の主要テーマになっている。

具体的には、新規事業に参入すべきか、どの技術領域にライバルが集中しているか、自社技術のどの部分が競合の手薄な「白地」なのか、といった問いに知財情報が答えを出す。中小企業の知財担当者や経営者がこの分析を内製するには相当のリソースが必要だが、本事業ではINPITが委託する専門家チームが全プロセスを伴走支援する。

なお、いわゆるFTO(フリーダム・トゥ・オペレート)調査や特許侵害予防調査は本事業の対象外である。「特定の製品が他社特許に抵触しないか」を確認したい場合は別途専門家に依頼する必要がある。この点は応募前に確認しておきたい。

中小メーカーにとって何を意味するのか

大手企業ならば知財部門が自前でIPランドスケープを実施できるが、中小メーカーにはそのリソースがない。「特許は出願すれば終わり」という認識で自社の技術資産を眠らせたままの企業も多い。本事業が提供するのは、そうした「知財の持ち腐れ」を打破する糸口だ。

たとえば、自社の製造技術に関する特許出願の周辺に競合他社がどのように特許を固めているかを可視化することで、ライセンス交渉の優位性を見極めたり、次の研究開発の方向を修正したりする判断材料を得られる。また、新規市場への参入可否を検討する際に、知財の観点から参入障壁の高さを客観的に把握できる。

令和4-7年度の過去事業の事例集によると、環境・エネルギー分野の中小企業が独自ソーラーシステムの独自性を特許情報で確認し、特許出願のブラッシュアップと関係者へのアプローチにつなげた事例などが公開されている。業種・課題の異なる複数の事例がIPL支援ポータルで閲覧できるため、「うちには関係ない」と決めつける前に確認してほしい。

もう一つ重要なのが、採択後のアクションだ。分析結果を受け取って終わりではなく、INPITまたは委託事業者によるアンケート・ヒアリング調査への協力が求められる。ただし、開示内容は事前に応募企業と協議の上決定されるため、企業秘密が無断で外部に出ることはない。

応募前に確認すべき5つのポイント

本事業は公募制のため、「申し込めば必ず採択される」ものではない。また、応募要件や対象外ケースがあるため、以下の点を事前に整理した上で応募書類を準備したい。

  • 【説明会の視聴が応募要件】令和8-9年度の公募では、公募説明会への参加またはアーカイブ動画の視聴が必須。まずIPL支援ポータルでアーカイブ動画を確認する。
  • 【経営課題を言語化しておく】本事業は「経営・事業の課題解決」が目的。「どの市場に参入すべきか」「競合との技術差別化をどう測るか」など、具体的な問いを整理した上で応募書類を書く。
  • 【FTO調査・侵害調査は対象外】特定製品が他社特許に抵触しないかの調査は本事業の範囲外。別途専門家に相談する必要がある。
  • 【特許情報分析を業とする者は対象外】特許調査や知財コンサルを本業とする事業者は応募できない。
  • 【採択企業は再応募不可(原則)】すでに採択された経験のある企業は再応募できない。不採択だった場合は次回以降に再挑戦できる。知財総合支援窓口での応募書類作成支援も活用できる。

今すぐ取れる具体的なアクション

第2回公募の詳細スケジュールはIPL支援ポータルで随時更新される。スケジュールが出た瞬間に動けるよう、今のうちに準備を進めておくことが採択率を上げる近道だ。

まず取り組むべきは「経営課題の棚卸し」だ。「どの新市場に参入するか迷っている」「競合他社が自社技術の周辺で特許を積み上げているようで不安だ」「自社の製造ノウハウをどこまで特許化すべきか判断できない」——こうした経営上の問いを文章化しておく。IPランドスケープはその問いに知財情報で答えを出すアプローチだからこそ、問い自体を明確にしておくことが採択への第一歩となる。

次に、J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)で自社・競合他社の出願動向を予習しておくと、専門家との議論がより深まる。J-PlatPatはINPITが無料で提供する特許情報検索サービスであり、企業名や技術キーワードで特許・実用新案を検索できる。使い方に不安があれば、各都道府県に設置されているINPIT知財総合支援窓口に相談すれば、無料でアドバイスを受けられる。

知財を「取得して終わり」から「経営の意思決定に使う道具」へ転換することが、2026年の知財活用の核心だ。本事業はその転換を費用ゼロで支援する、数少ない公的メニューの一つである。第3回以降の公募も予定されているが、早期に応募書類の品質を磨いておくことが採択への近道となる。

よくある質問

Q. IPランドスケープ支援事業の費用は本当にかかりませんか?

A. はい、利用者の費用負担はありません。専門家への報酬はINPITが全額支援する公募制事業です。ただし採択審査があるため、応募すれば必ず採択されるわけではありません。

Q. 過去に採択された企業は再応募できますか?

A. 原則として、過去に採択された企業の再応募は受け付けていません。一方、不採択だった企業は次回以降の公募に再挑戦できます。

Q. FTO(フリーダム・トゥ・オペレート)調査にも使えますか?

A. いいえ、本事業の対象外です。自社製品が他社特許に抵触しないかを確認するFTO調査や特許侵害予防調査を目的とした応募は受け付けていません。これらは別途弁理士や特許事務所にご相談ください。

Q. 第2回の公募期間はいつまでですか?

A. 具体的な公募期間はINPITの特設サイト「IPL支援ポータル」(ipl2026-2027.inpit.go.jp)で随時更新されます。令和8-9年度は2年間で計8回の公募が予定されているため、第2回を逃しても次回以降に応募できます。

Q. どんな業種・規模の企業が応募できますか?

A. 中堅・中小企業、個人事業者、および中堅・中小企業者で構成されるグループが対象です。ただし、特許情報分析を業として実施している事業者は対象外となります。

出典:【IPランドスケープ支援事業】第2回公募を開始しました(令和8年7月27日更新)