「強みを価値に」知財経営を実践する5つの問い

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「技術はある。でも儲かっていない」——そんな中小メーカーの悩みに直結するイベントが動き出した。INPIT・特許庁・近畿経済産業局は2026年10月21日、「つながる特許庁 in KANSAI/関西ビジネス知財フォーラム2026」を11月24日に大阪で開催すると発表した。テーマは「強みを、価値に。価値を、成長に。」。このフォーラムが投げかける問いは、関西の企業だけでなく、全国の中小製造業が今すぐ考えるべき経営課題そのものだ。

フォーラムの概要——何が行われるのか

INPIT(独立行政法人工業所有権情報・研修館)は、特許庁・近畿経済産業局と共催で「つながる特許庁 in KANSAI/関西ビジネス知財フォーラム2026」を2026年11月24日(火)に開催する。会場はグランフロント大阪 北館4階のナレッジシアター(大阪市北区)で、オンライン同時配信も行われる。参加費は無料だ。

プログラムは約3時間半にわたる。早稲田大学大学院経営管理研究科・長内厚教授による基調講演「技術を価値に変える経営戦略」を皮切りに、大阪府の企業2社が「100億企業への成長戦略」をテーマにパネルディスカッションを行う。さらにトークセッションでは、支援機関から実際に支援を受けて成長した企業3社が「支援で企業はどう変わったか」を語り合う構成だ。申込期限は2026年11月19日(木)17時。

このイベントが単なる制度説明会と一線を画すのは、「実際に知財支援を受けた中小企業の経営者自身が登壇する」点にある。川村義肢株式会社(大阪府大東市)やナミテイ株式会社(大阪府東大阪市)、山科精器株式会社(滋賀県栗東市)、井藤漢方製薬株式会社(大阪府東大阪市)といった実在の企業が、知財活用によって経営をどう変えたかを具体的に語る。「うちには関係ない」と思い込んでいた経営者にこそ、刺さる内容が期待できる。

なぜ今、「強みを価値に変える」ことが問われるのか

「知財=特許出願」という思い込みが、中小企業の知財活用を長年阻んできた。しかし特許庁・INPITが近年一貫して発信するメッセージは異なる。技術やノウハウ、ブランド、デザインといった自社固有の「強み」を、権利取得にとどめず、競争優位・新市場・収益へとつなぐ経営手段として知財を位置づける——それが「知財経営」の本質だ。

今回のフォーラムの基調講演タイトル「価値創造と価値獲得を両立し、競争優位と成長につなげる」は、この考え方を端的に表している。技術を開発しても、その価値を市場から回収できなければ、研究開発投資は回収されない。特許・商標・意匠・ノウハウ管理という知財のツールは、まさに「価値獲得」のための装置として機能する。

中小メーカーが陥りがちなのは、「良い製品を作れば売れる」という信念と、「知財は大企業のもの」という諦めが同居した状態だ。しかし、自社の技術・製法・デザインを適切に保護・活用しなければ、競合他社に模倣され、価格競争の泥沼に引き込まれる。知財経営は守りであると同時に、攻めの経営戦略でもある。

知財経営を実践する5つのステップ

「強みを価値に変える」ために、中小企業が取るべきアクションはどのようなものか。フォーラムの趣旨と、INPITや特許庁が公表している支援資料をもとに、実務的な視点から整理する。

まず出発点は「自社の強みの棚卸し」だ。売上の源泉になっている技術・製法・ノウハウ・ブランド・デザインを書き出す。この作業は難しく見えて、実はINPITの知財総合支援窓口(全国47都道府県設置、無料)のスタッフに相談しながら進めることができる。専門家がゼロから伴走してくれるため、社内に知財担当者がいなくても始められる。

次に「競合分析と権利化の判断」だ。J-PlatPat(特許庁・INPIT提供の無料特許データベース)で類似技術や登録商標を検索し、自社の強みが権利化できる状態にあるかを確認する。権利化が難しい場合でも、ノウハウとして秘匿化する戦略や、先使用権を意識した証拠保全という選択肢がある。

その後の段階では「知財を使って稼ぐ仕組みを設計する」ことが重要になる。取得した権利を棚に眠らせず、ライセンス・ブランド活用・調達・営業ツールとして機能させる。大手との取引交渉で自社技術の独自性を示したり、展示会で商標登録済みロゴを前面に出したりするだけでも、商談の質は変わる。

最終的には「知財戦略と事業戦略の統合」が目標となる。新製品開発のロードマップと権利取得のタイミングを連動させ、5年後・10年後の競争優位をどう設計するかを経営計画に組み込む段階だ。この水準に達すると、知財は「コスト」ではなく「投資」として経営者の頭の中に位置づけられる。

中小企業が「強みを価値に変える」知財経営の5ステップ
1
Step 1|強みの棚卸し
技術・製法・ノウハウ・ブランド・デザインを書き出す。INPIT知財総合支援窓口(無料)に相談しながら進めることができる。
2
Step 2|競合分析と権利化判断
J-PlatPat(無料)で類似特許・商標を調査。権利化が難しい場合は秘匿化・先使用権の証拠保全という選択肢もある。
3
Step 3|知財で稼ぐ仕組みの設計
取得した権利をライセンス・商談・営業ツールとして活用。休眠特許を棚から降ろすだけで交渉力が変わる。
4
Step 4|知財戦略と事業戦略の統合
新製品ロードマップと権利取得タイミングを連動させ、5〜10年後の競争優位を経営計画に組み込む。
5
Step 5|継続的な見直し・支援活用
事業環境の変化に合わせて知財ポートフォリオを定期的に棚卸しし、INPIT・弁理士との伴走支援を継続する。

「支援を受けた企業はどう変わったか」——登壇企業から読み解くヒント

今回のフォーラムで注目したいのが、トークセッションに登壇する企業群だ。義肢装具を手がける川村義肢、東大阪の中小メーカーであるナミテイ、滋賀の精密機器メーカーである山科精器、そして漢方製品メーカーの井藤漢方製薬——業種も規模も異なるが、いずれも「支援機関と連携して知財経営に取り組んだ結果、経営が変わった」という点で共通している。

これらの企業が語るのは、「支援後の気づき」と「経営判断の変化」だ。知財支援を受けることで「自社の強みが言語化された」「競合との差別化ポイントが明確になった」「資金調達や販路開拓に知財情報を活用できるようになった」といった変化が、リアルな言葉で語られることが予想される。書籍や制度説明では伝わらない「経営者の体感」こそが、このセッションの価値だ。

関西圏以外の読者にとっても、当日のオンライン配信を活用する価値は十分にある。フォーラム終了後に議事録や動画が公開される可能性もあるため、INPIT近畿本部のウェブサイトを継続的にチェックしておくとよいだろう。

中小企業が今すぐ取れる具体的な行動

フォーラムへの参加申し込みはINPIT近畿本部の特設ページから行える。申込期限は2026年11月19日(木)17時で、参加費は無料。会場参加が難しい場合もオンライン配信で参加できる。まず「聞く」ことが、知財経営への最短ルートになり得る。

フォーラム参加と並行して、INPIT知財総合支援窓口への相談予約を入れることも強くすすめたい。全国47都道府県に設置されたこの窓口では、弁理士・弁護士・中小企業診断士などの専門家チームが無料で経営課題を聞き取り、知財の観点から解決策を提案する。「何を相談すればいいかわからない」という状態でも受け付けている。

なお、本記事は制度・イベントの概要を解説したものであり、個別の出願可否や権利化戦略に関する法的助言を行うものではない。具体的な知財戦略の策定にあたっては、弁理士などの専門家に相談されることをおすすめする。

よくある質問

Q. フォーラムは関西在住でないと参加できませんか?

A. いいえ。オンライン配信も実施されるため、全国どこからでも参加できます。参加費は無料で、申込期限は2026年11月19日(木)17時です。INPIT近畿本部の特設ページからお申し込みください。

Q. INPIT知財総合支援窓口はどこにありますか?費用はかかりますか?

A. 全国47都道府県に設置されており、相談は無料です。弁理士・弁護士・中小企業診断士などの専門家チームが知財の観点から経営課題の解決をサポートします。「何を相談すればいいかわからない」という段階でも受け付けています。

Q. 特許を取っていなくても知財経営はできますか?

A. はい。知財経営は特許権取得だけを指すものではありません。商標登録によるブランド保護、ノウハウの秘匿化(営業秘密管理)、意匠登録によるデザイン保護など、自社の強みに合った手段を組み合わせることが重要です。まずINPITの窓口で自社の強みを棚卸しするところから始められます。

Q. J-PlatPatとは何ですか?無料で使えますか?

A. 特許庁・INPITが提供する無料の産業財産権情報検索サービスです。国内外の特許・実用新案・意匠・商標の公報や審査経過情報を検索・閲覧できます。アカウント登録不要で利用でき、競合他社の出願動向調査や自社技術の新規性確認に役立ちます。

出典:つながる特許庁 in KANSAI/関西ビジネス知財フォーラム2026を開催(INPIT・特許庁・近畿経済産業局、2026年10月21日発表)