中国改正商標法2027年施行、日本企業が今すぐ動くべき理由

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2026年6月26日、中国・全人代常務委員会が改正「商標法」を可決した。2027年1月1日の施行まで約半年。異議申し立て期間の短縮や悪意ある商標への新規制が盛り込まれており、中国に商品を輸出・販売する中小メーカーには、今すぐ自社の商標状況を点検する必要がある。

今回の改正で何が変わったのか

中国の商標法は1983年の施行以来、1993年・2001年・2013年・2019年と4回の改正を経てきた。今回は5回目の改正にあたり、2026年6月26日に全人代常務委員会で可決され、2027年1月1日から施行される。

改正の柱は大きく4つある。第一に「心機商標」(消費者を誤解させる悪質な商標)の取り締まり強化(第56条)。違法営業額が5万元(約115万円)以上の場合、違法営業額の5倍以下の罰金が科されるなど、制裁が明確化された。第二に、悪意ある商標登録出願への罰則強化。第三に、商標代理機関(代理事務所)への規律強化。第四に「馳名商標」(中国国内で広く知られた商標)の保護強化と企業の海外進出支援(第69条)だ。

日本企業にとって特に注意が必要なのが、異議申し立て期間の変更だ。現行法では3カ月間だったものが、改正後は2カ月間に短縮される(第36条)。これは一見小さな変更に見えるが、実務上は大きな影響がある。第三者が自社のブランドに類似した商標を不正登録した場合、それを発見し、翻訳・調査・現地代理人への連絡・書類準備をこなす時間が1カ月短くなるということだ。

中国ビジネスで商標を「後回し」にする危険性

中国は「先願主義」の国だ。誰よりも先に出願した者が権利を得る。つまり、実際に使っているブランドであっても、他者が先に登録してしまえば権利はその他者に帰属する。日本では「先使用権」という概念によって一定の保護を受けられるケースがあるが、中国ではこの考え方の運用が限定的だ。

日本の中小メーカーの間では、「まだ中国に本格進出していないから」「取引先が限られているから」という理由で商標出願を後回しにするケースが少なくない。しかし、日本で話題になった商品やサービスは、中国のビジネス関係者によってSNSや通販サイトで把握されることが多い。人気が出始めたタイミングで第三者に商標を先取りされ、中国市場への進出が実質的に封じられたり、自社ブランドの使用停止を求められたりするトラブルは以前から繰り返されてきた。

今回の改正で異議申し立て期間が短縮されると、こうした「冒認登録」(第三者による先取り登録)が行われた際の対抗手段を取る猶予がさらに狭まる。監視体制が整っていない中小企業ほど、制度変更のしわ寄せを受けやすい。

改正商標法が意味すること——知財担当者・経営者への解説

今回の改正は「中国政府が商標制度の質的向上を本格化させた」というシグナルと読むことができる。悪意ある商標出願への規制強化は、長年、外資企業が苦しめられてきた「商標ブローカー問題」への対処という側面がある。一方で、それと同時に制度のスピード化(異議期間短縮)も進んでいる点は、準備のできていない企業には不利に働く。

中国向けの商標管理においては「予防」こそが最善の知財戦略だ。すでに中国で事業を展開している企業も、これから展開を検討している企業も、まず自社ブランドが中国で出願・登録されているかを確認することが第一歩となる。未登録のまま放置すれば、ブランドのグローバル展開における最大のリスクを抱え続けることになる。

また、改正商標法が施行される2027年1月1日は、今から約6カ月後だ。中国での商標審査には通常数カ月以上かかる。出願から登録までの時間を考えると、今この段階から動き始めなければ、施行前の登録完了は難しくなる。「施行後に対応すれば良い」という発想では、制度の変わり目に生じるリスクを回避できない。

中小メーカー・知財担当者が今すぐ取れる行動

以下では、改正商標法の施行を見据えて、実務上取り組める具体的なアクションを整理する。特定の手続きの可否については専門家に相談することを強く勧める。

  • 【状況確認】自社ブランド名・商品名・ロゴが中国商標局(CNIPA)のデータベースで既に他者に登録されていないか無料で検索できる。まずここから始めよう。
  • 【未出願なら即検討】未登録のまま輸出・越境EC等で中国向け販売を行っている場合、早急に出願の検討を。ジェトロや弁理士事務所に相談するのが近道だ。
  • 【監視体制の見直し】登録済みの企業も、自社商標に類似する第三者の出願がないかを定期的に監視する仕組みを整えることが重要。異議期間短縮後は特に速報性が求められる。
  • 【代理機関の選定確認】今回の改正では代理機関への罰則も強化された。信頼性の高い現地代理機関・法律事務所と提携しているか確認したい。ジェトロ北京事務所知的財産部では日本語での相談窓口も設けている。
  • 【商標管理台帳の整備】自社が保有する中国商標の登録番号・区分・更新期限を一覧化した台帳を作成・更新することで、管理漏れを防ぐ。更新を怠ると権利が失効するため注意が必要だ。
中国商標リスクを回避する5ステップ(施行前チェックリスト)
1
Step 1:現状確認
CNIPAデータベースで自社ブランド名・ロゴが第三者に登録されていないか検索する
2
Step 2:未出願ブランドのリストアップ
中国向け販売がある・今後予定している商品・サービス名を洗い出す
3
Step 3:出願区分の検討
商品・サービスの内容に応じたニース分類(商品・サービスの区分)を確認し、必要な区分を漏れなく出願する
4
Step 4:監視体制の構築
登録後も類似商標の出願を定期監視する仕組みを整備。異議期間(改正後2カ月)内に対応できる体制を作る
5
Step 5:管理台帳の整備と更新
登録番号・区分・更新期限を一覧化。更新失効による権利消滅を防ぐ

この問題は「大企業だけのこと」ではない

商標のトラブルは大企業だけの問題ではない。むしろ、知財部門が独立していない中小メーカーや、越境ECで中国向けに販売を始めたばかりのメーカーほど、このリスクにさらされやすい。特に、食品・調味料・伝統工芸品・美容品・農産物加工品など、日本ブランドが強みを持つカテゴリーは冒認登録の標的になりやすい傾向がある。

2027年1月1日という施行日は、経営者や知財担当者にとって一つの具体的なチェックポイントだ。「いつかやろう」ではなく、「施行前に手を打つ」という姿勢が、ブランドを守る最短の道だ。まずは現状把握から始め、必要であればジェトロや専門家への相談を検討してほしい。

よくある質問

Q. 中国でまだ販売していないブランドでも商標出願は必要ですか?

A. 中国は先願主義のため、販売前であっても第三者に先に登録されるリスクがあります。将来的に中国市場への展開を少しでも検討しているなら、早めに出願を検討することが有効です。具体的な判断は弁理士にご相談ください。

Q. 改正商標法の施行は2027年1月1日ですが、出願は今から間に合いますか?

A. 中国での商標審査には一般的に数カ月以上かかります。施行前に登録を完了させるためには、今から動き出すことが重要です。ただし審査期間は状況により異なるため、専門家への早めの相談をお勧めします。

Q. 異議申し立て期間が2カ月に短縮されると、実務上どのように対応すればよいですか?

A. 自社商標に類似する第三者の出願が公告された際に、速やかに把握・対応できる監視体制の整備が重要です。現地の商標代理機関やジェトロ北京事務所知的財産部などと連携し、情報収集のスピードを上げることが対策となります。

Q. 「馳名商標」の保護強化は日本の中小メーカーにも関係しますか?

A. 馳名商標は中国国内で広く知られた商標を指し、特別な保護を受ける制度です。日系企業でも一定の認知度があれば申請できる可能性があります。ただし認定には条件があるため、詳しくは専門家への確認をお勧めします。

Q. ジェトロに相談することはできますか?

A. ジェトロ北京事務所知的財産部では日本語での相談窓口を設けています(Tel:+86-10-6528-2781)。また、ジェトロの各地のジェトロ・アドバイザリーサービスでも中国知財に関する相談が可能です。

出典:全人代常務委員会で改正商標法が可決、2027年1月1日から施行(中国)