2026年10月13日、特許庁のインターネット出願ソフトに障害が発生した。同年4月から施行された「オンライン発送10日到達ルール」と重なった場合、実際にソフトを開けなくても応答期限が進行するリスクがある。中小メーカーや知財担当者は、今すぐ自社の受信環境と期限管理の仕組みを点検する必要がある。
何が起きたのか——10月13日の障害と特許庁の発表
2026年10月13日、特許庁のインターネット出願ソフトに障害が発生したことが特許庁公式ホームページで告知された。出願・応答・各種手続の電子申請に影響が生じた可能性があり、特許庁は利用者に注意を呼びかけた。
インターネット出願ソフトは、特許・実用新案・意匠・商標の出願や応答期限内の手続補正、料金納付など、産業財産権手続の中核を担うシステムだ。日常的にこのソフトに依存している企業の知財担当者にとって、障害は単なる利便性の問題にとどまらない。
今回の障害が特に注意を要するのは、令和8年4月1日に施行された「オンライン発送制度の見直し」との組み合わせリスクが潜んでいるからだ。
令和8年4月施行「10日到達ルール」とは何か
特許庁は令和8年4月1日より、特許庁からの通知(拒絶理由通知・審査結果通知等)のオンライン発送に関するルールを見直した。従来は書面郵送との併用が可能だったが、改正後は「インターネット出願ソフトで受取可能となった日の翌日から起算して10日が経過した時点で到達したとみなす」という新たな扱いとなっている。
重要なのは、実際にソフトを起動してダウンロードしていなくても、受取可能状態になってから10日を経過した段階で到達が確定するという点だ。つまり、担当者が出張・病欠・システム障害などで10日間ソフトを確認できなかった場合でも、拒絶理由通知の応答期限(原則60日または3か月)のカウントが自動的に始まる。
中小企業では、知財担当者が1人で特許管理を兼務しているケースが多い。その担当者がシステム障害や社内の繁忙で10日間インターネット出願ソフトを確認できなかった場合、気づかないうちに応答期限が進行してしまうリスクがある。
なぜ今この問題が「経営リスク」になるのか
特許の拒絶理由通知に対し、期限内に応答できなければ出願は「拒絶査定」が確定する。権利化を目指していた発明がそのまま失権し、競合他社が同様の技術を後から出願・権利化することも理論上あり得る。中小製造業にとっては、長年かけて育てた技術資産が一度の「見落とし」で失われるリスクだ。
障害発生日が通知の受取可能日と近接していた場合、カウントが既に始まっている通知が存在する可能性がある。令和8年10月13日の障害を受けて、自社の出願・審査中案件に未確認の通知が届いていないかをまず確認することが最初の行動となる。
また、障害の影響によって手続が遅延したことを特許庁に対して証明できれば、期間の延長や救済手続(手続の追完)が認められる可能性がある。特許法第21条・第122条等に基づく手続救済の適用可否については、弁理士に相談することが現実的な対処法だ。ただし、救済には要件と期限があるため、早期の確認が不可欠である。
知財担当者が今すぐ取るべき3つの行動
今回の障害と10日到達ルールが交差するリスクを踏まえ、中小企業の知財担当者・経営者は以下の3点を早急に確認することを勧める。
第1に、インターネット出願ソフトを起動し、10月13日前後に受取可能状態になった通知が存在しないかを確認する。未ダウンロードの通知があれば、到達日と現在の応答期限を正確に把握する。
第2に、複数の担当者(または外部の弁理士事務所)が同じ通知を確認できる体制を整える。1人担当制は障害・不在・離職のいずれの場面でも致命的な見落としを生みやすい。
第3に、特許庁が今後公表する障害の詳細情報と手続救済の案内を継続的にチェックする。特許庁の公式ホームページおよびINPIT(工業所有権情報・研修館)の知財総合支援窓口に問い合わせることで、個別状況に応じた対応策を確認できる。
- インターネット出願ソフトを起動し、10月13日前後の未受領通知を確認する
- 複数人・外部弁理士と連携した「二重チェック体制」を構築する
- 特許庁HPとINPIT窓口で障害に関する救済措置の情報を随時確認する
中小企業が備えるべき「期限管理の仕組み」
今回のインシデントは、個別の障害対応にとどまらず、中小企業の知財管理体制全体を見直す契機でもある。
特許庁のオンライン発送通知は、インターネット出願ソフト専用の受信トレイに届く。一般的な電子メールとは異なり、担当者が能動的にソフトを起動しなければ通知を確認できない設計になっている。「メールが来ていないから大丈夫」という思い込みは通用しない。
推奨される管理方法としては、週1回以上の定期ログインをルール化し、ログイン記録を台帳等で管理することが挙げられる。弁理士事務所に代理人として手続を委任している場合でも、自社の確認フローを別途設けておくことがリスク分散につながる。
INPITが全国47都道府県に設置している「知財総合支援窓口」では、特許出願・期限管理の相談を無料で受け付けている。制度の仕組みの確認から体制整備のアドバイスまで、専門家に気軽に相談できる入口として積極的に活用してほしい。
よくある質問
Q. 障害中に通知を受け取れなかった場合、応答期限は延長されますか?
A. 特許庁の障害が原因で手続が不可能だったことを証明できれば、特許法上の「手続の追完」や期間延長が認められる可能性があります。ただし要件や申請期限があるため、弁理士への相談と特許庁公式サイトの確認を速やかに行ってください。当サイトは法的判断を行うことはできません。
Q. 「10日到達ルール」は全ての通知に適用されますか?
A. 令和8年4月1日以降、「特定通知等を受ける旨の届出」をしている利用者に対するオンライン発送の通知に適用されます。どの通知が対象かは特許庁の案内や弁理士にご確認ください。
Q. インターネット出願ソフトを使っていない場合はどうなりますか?
A. 届出をしていない場合や書面手続を継続している場合は、従来通り書面での通知が届きます。ただし今後の制度変更の動向は引き続き注視する必要があります。
Q. INPIT(知財総合支援窓口)への相談は無料ですか?
A. はい、INPITが全国に設置している知財総合支援窓口での相談は無料です。特許出願の手続き・期限管理から体制整備の相談まで、専門家が対応します。
