最高裁の「AI発明者NG」判決が確定した2026年3月。これを受けて「うちの会社はAIで開発を効率化しているけど、大丈夫なのか?」と不安を感じている経営者・開発担当者も多いだろう。難しい法律論は抜きにして、中小企業・スタートアップが今すぐ押さえるべき3つのポイントを徹底解説する。

■ そもそも、AIを使った発明は出願できるのか?

結論から言えば、AIを使って生まれたアイデアでも、人間が理解・改良・加工していれば出願できる。今回の最高裁判決が禁じたのは「AIそのものを発明者として記載すること」であり、AIを開発プロセスで活用することを禁じたわけではない。

例えばChatGPTに「〇〇の課題を解決する装置のアイデアを出して」と入力し、出てきた提案を人間が評価・改良・具体化して出願する場合、発明者はその人間だ。AIはあくまで「計算機」や「参考書」と同じ位置づけになる。

■ ポイント① 人が記載する ── 発明者は必ず自然人に

最も基本的かつ重要なことだが、出願書類の「発明者」欄には必ず自然人(人間の氏名)を記載しなければならない。これはAI活用の有無にかかわらず、現行法上の絶対的な要件だ。

問題は「誰を発明者とすべきか」だ。特許法上の発明者とは、「発明の技術的思想の創作に現実に加担した者」を指す。AIのアウトプットをそのままコピーしただけでは人間の「創作への加担」が認められない可能性があるため、AIの提案をどのように人間が評価し、どう改良を加えたかのプロセスを記録しておくことが極めて重要だ。

■ ポイント② 記録・保管する ── AI利用の証拠が命綱になる

特許が成立した後、競合他社から無効審判を起こされるケースは珍しくない。「この発明は人間が創作したものではなく、単にAIのアウトプットをコピーしたに過ぎない」と主張された場合、反証するための証拠がなければ特許が無効になるリスクがある。

具体的に保管すべき記録は以下の通りだ。

保管すべき記録 内容 保管期間の目安
AIとのやり取りログ 入力プロンプト・出力結果の全履歴 特許期間中(最長20年)
発明ノート AIの提案をどう評価・改良したか 同上
会議議事録 開発チームでの議論・意思決定の経緯 同上
試作・実験記録 技術的検証のプロセス 同上

■ ポイント③ 法改正に備える ── 2027〜2028年が転換点か

特許庁・内閣知財戦略本部は既に「AI時代の知的財産権検討会」を設置し、継続的な議論を行っている。2024年5月に公表された中間とりまとめでは、AIが自律的に行った発明の保護については「引き続き検討が必要」とされており、中長期的には特許法の改正が不可避とみられている。

欧州では既にAI発明の保護に向けた新たな法制度の枠組みについて議論が進んでおり、国際動向が日本の立法にも影響を与えると予想される。早ければ2027〜2028年頃には日本でも具体的な法改正の動きが出てくる可能性が高い。

✅ 今すぐできること:AI開発ツールの利用規約を確認し、社内でのAI活用ガイドラインを文書化しておこう。弁理士への事前相談も含め、知財戦略を「後追い」から「先手」に切り替えることが、次の競争優位を生む。