特許の維持費はいくらかかる?費用対効果で考える“残す特許・捨てる特許”
特許は「取得したら終わり」ではありません。
実は、特許は取得後の維持費こそが本当のコストと言われています。
毎年かかる特許維持費(特許年金)を払い続けるべきか、
それとも見直すべきか——
この判断は、企業の利益や研究開発戦略に直結します。
本記事では、
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特許の維持費はいくらかかるのか
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なぜ多くの特許が費用倒れになるのか
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費用対効果の考え方
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残すべき特許・見直す特許の判断基準
を、実務目線でわかりやすく解説します。
特許の維持費はいくらかかるのか(日本の場合)
特許にかかる費用は、大きく分けて以下の3つです。
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出願時費用
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登録時費用
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維持費(特許年金)
特に問題になりやすいのが、登録後に毎年発生する維持費です。
特許年金の基本構造
日本では、特許登録後に「特許年金」を支払う必要があります。
年数が進むごとに、金額は段階的に増加します。
おおよその目安は以下の通りです。
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1~3年目:比較的低額
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4~6年目:徐々に増加
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7~10年目:負担感が出始める
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10年超:維持するかどうかの分岐点
1件あたりで見ると、20年間維持した場合、数十万円~100万円超になることも珍しくありません。
これが複数件になると、企業にとっては無視できない固定費になります。
なぜ多くの特許が「費用倒れ」になるのか
特許は「取っただけ」では、1円も生みません。
実際、多くの特許が次のような理由で収益につながらず、
維持費だけを払い続ける状態になっています。
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自社製品・サービスで使われていない
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市場ニーズが変化している
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権利範囲が狭く、他社が使いにくい
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そもそも誰も必要としていない
結果として、
「守るためだけにコストを払い続けている特許」
が社内に蓄積していきます。
特許の費用対効果はどう考えるべきか
特許の費用対効果は、単純に
「売上を生んでいるか」
だけで判断すべきではありません。
以下の観点で総合的に見ることが重要です。
① 自社事業への貢献度
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現在の製品・サービスで使われているか
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将来使う予定があるか
② 他社にとっての価値
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他社が使えば事業になるか
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業界で汎用性があるか
③ ライセンス・売却の可能性
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ライセンス提供が可能か
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技術移転の余地があるか
④ 代替技術の有無
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すでに別技術に置き換わっていないか
これらを考えずに「とりあえず維持」は、
費用対効果の悪化を招く典型例です。
“残す特許”と“見直す特許”の判断基準
ここで、実務的に使える簡単な判断基準を紹介します。
残すべき特許の特徴
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自社の中核事業に直結している
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他社が簡単に回避できない
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ライセンスや共同開発に使える
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技術トレンドと合致している
見直すべき特許の特徴
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自社でも使っていない
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事業計画に登場しない
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維持理由が「念のため」だけ
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市場ニーズが消えている
重要なのは、
「価値があるかどうか」を感覚ではなく、構造的に判断することです。
維持費を“コスト”から“投資”に変える方法
特許維持費を無駄にしないためには、
「収益につなげる視点」を持つことが不可欠です。
具体的には以下のような方法があります。
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ライセンス提供による収益化
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他社との共同事業・技術供与
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特許の再設計・用途転換
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海外市場での活用
特に近年は、
「自社で使わない特許を、他社に使わせる」
という発想が重要になっています。
AIで特許を評価するという新しい選択肢
近年注目されているのが、
AIによる特許評価・スコアリングです。
AIを活用することで、
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特許の強さ
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市場性
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ライセンス適性
を客観的に分析できるようになりつつあります。
これにより、
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維持すべき特許の優先順位付け
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不要特許の早期見直し
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収益化可能性の見える化
が可能になります。
経験や勘だけに頼らず、
データに基づいた維持判断ができる点が大きなメリットです。
よくある質問(FAQ)
特許はすべて維持したほうがいいですか?
いいえ。事業との関係性や将来性を考慮し、取捨選択が必要です。
特許を捨てるとリスクはありますか?
競合が同様技術を使う可能性はありますが、使われていない特許を持ち続けるコストもリスクです。
途中で特許を手放しても問題ありませんか?
問題ありません。更新しなければ自然に権利は消滅します。
まとめ:特許は「持ち続ける判断」が経営を左右する
特許は取得よりも、
「どれを維持し、どれを見直すか」
の判断が重要です。
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維持費は静かに経営を圧迫する
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すべての特許が資産になるわけではない
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評価と収益化の視点が不可欠
特許を単なるコストで終わらせず、
事業に活かす知的資産として再定義することが、
これからの知財戦略に求められています。


